ブレンド
JDS ホワイトラベル
色の枠の
JDS(Japanese Dark Spirits)は、福岡を拠点とする株式会社SHOCHU X(2020年設立)が手がける、樽熟成焼酎のボトラーズブランドです。九州をはじめとする蔵元から、樽熟成を軸に原酒を選び、ときにブレンドして、焼酎の色と度数の上限の内側にあるものは本格焼酎として、上限を超えた原酒はスピリッツとして、自社のラベルで届けています。
なぜ始めたか
私は九州の出身でも、酒蔵や酒屋の家の生まれでもありません。焼酎は、ただ酔うための安い酒だと思っていました。大学時代、焼酎が何十種類も並ぶ居酒屋でアルバイトを始め、店主に勧められて恐る恐る口にしたとき、そのイメージが壊れました。「焼酎ってこんなに美味しかったんだ……」
やがて、日本酒が世界で「SAKE」になっていると知り、大好きな焼酎のことが胸に引っかかりました。焼酎の本場・九州を訪ね、業界のイベントにも足を運んで、焼酎の仕事がしたいと伝えると、返ってきたのは「焼酎は不景気だよ」という言葉。それでも諦めきれず、在学中に焼酎専門商社でインターンとして働き始めました。
インターン中の夏休み、シンガポールの百貨店の催事で、六調子酒造の焼酎を売りました。通りがかる人に「韓国のソジュなら知っているよ」「これはジン?」と言われながらも、試飲を勧め続けました。
焼酎という名すら
その光景を、何度も目にしました。焼酎の可能性を確信したのは、このときです。
DECISION / 決意
これほど人の心を動かす酒の魅力が、まだ伝わりきっていない。自分が動かないと始まらない——そう思い、焼酎のブランドを立ち上げることを決めました。
創業からJDSへ
2020年4月、株式会社SHOCHU Xを設立しました。高度数と長期熟成を軸に、納得した味わいだけを商品にしてきました。正直に言えば、かつての私は、色のない焼酎こそが正義だと思っていました。けれど樽熟成を学ぶうちに面白い原酒にいくつも出会い、「これ全部樽ごと買い取って商品化したいな」と思うまでになったのです。




株式会社SHOCHU Xを設立
第一弾は、ゑびす酒造の
「煌星」で、樽とブレンドへ
本格焼酎の
「凜和」で、45%の先へ
天盃の
JDSシリーズ、始動
色の
長期熟成の
23年熟成「2000 Nikkei」、
ブランドの名を、JDSに
シリーズ名「Japanese Dark Spirits」を、ブランドと
定番「JDS ホワイトラベル」
限定品が
樽熟成焼酎という形式
SHOCHU ROOTS / 焼酎の起源
蒸留の技が海を渡ってきたのは、約500年前とされます。南の琉球を経たのか、北の朝鮮半島を経たのか、道筋には諸説あります。その技が麹で仕込む酒造りと出会い、温暖な気候や、芋づくりに向いたシラス台地といった条件のもとで、土地ごとの作物を使う焼酎が育っていきました。
九州北部は麦、熊本・球磨は米、鹿児島・宮崎は芋。黒糖の焼酎は奄美群島でだけ造ることが認められ、沖縄には泡盛があります。土地ごとの作物が、それぞれの焼酎の味わいを形づくってきました。
凡例
蒸留の技の伝来(諸説あり)
主な原料
薩摩に、
薩摩を訪れた
「焼酎」の文字が残る、
伊佐・郡山八幡神社に、
地図:Allard Pierson, University of Amsterdam, OTM: HB-KZL 33.17.03
本格焼酎は、麹から生まれます。
多くは一度だけの蒸留で、麦や米、芋の風味を色濃く残します。
色は、樽から生まれます。
蒸留したての酒は、ほとんどが無色透明。琥珀色の多くは、木と時間があとからつけるものです。
樽熟成焼酎は、麹と、樽と、時間がつくるもの。
ただし焼酎の色には、上限があります。
色が濃いほど良い、という話ではありません。それでも色は、熟成を一目で伝える言葉になります。焼酎の価値を、国や言葉を越えてわかりやすく「翻訳」する一つの手段として、色という指標を使う。代表の橋本がJapanese Dark Spiritsを始めたのは、そう考えたからです。
本格焼酎の主な特徴は、次の三つです。
麹を使うこと。日本酒と同じく、麹で糖化と発酵を同時に進め(並行複発酵)、アルコールを得ます。焼酎の旨みと複雑な香りのもとです。
原料が多彩なこと。麦、米、芋、そば、黒糖など。原料ごとに、香りと味わいが変わります。
蒸留が基本的に一度であること。もろみの度数が約15〜17度と高く、一度の蒸留で40度前後になるため、二度三度と蒸留する必要がありませんでした。一度だけの蒸留だからこそ、原料の風味が色濃く残ります。
2024年12月には、焼酎・泡盛を含む日本の「伝統的酒造り」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
常圧蒸留は、ふつうの気圧のもとで蒸留する方法です。焼酎の世界では、減圧蒸留と区別するためにこう呼びます。
減圧蒸留は、蒸留器の中の気圧を下げ、低い温度で沸騰させる方法です。繊細な香りや甘みを損ないにくいとされます。焼酎では1970年前後から使われはじめ、1980年前後の焼酎ブームでは、その軽快でクリアな味わいが支持されました。焼酎が独自に育ててきた蒸留法です。
JDSの商品にも、常圧と減圧、それぞれの原酒が使われています。
なぜ未開拓なのか
最初の樽熟成焼酎が世に出たのは、1957年とされます。それでも、まだ拓かれていない領域が広く残っています。その大きな理由は、品質ではなく、焼酎という区分に定められた三つの枠にあると、私たちは考えています。その枠は、焼酎らしさを形づくってきたものでもあります。
色の上限
0.080
着色度(430nm・480nm)|国税庁の通達
本格焼酎の上限(着色度0.080)
この先は「焼酎」と名乗れない
※色はイメージです。
樽で長く寝かせるほど、色は濃くなります。焼酎の樽熟成は、この上限を前提に育ってきました。
度数の上限
45%
アルコール分45度以下(単式蒸留焼酎)|酒税法 第3条第10号
本格焼酎は45%以下(酒税法)
樽から引き出す成分は、樽に詰める度数で変わります。焼酎のままでは、60度台のような高い度数で樽に詰めることはできません。
製造免許
免許
例外は特産品焼酎など。JDSは現時点で製造免許を持たず、蔵元の樽から原酒を選んでいます。
昭和37年(1962年)の酒税法改正で、焼酎の定義は、原料で決める形から「アルコール含有物を蒸留した酒類」という広い形に書き換えられ、発芽させた穀類や果実を原料とするもの、白樺の炭でこしたもの、含糖質物を原料とするもの、蒸留の際にほかの物品の成分を浸出させたもの、の四つが除かれました。それまで雑酒だったスピリッツ類も、独立した種類になりました。
焼酎の色の上限も、この改正と前後して通達で置かれたとされます。その枠が、いまも焼酎の樽熟成のかたちを決めています。
1kLあたりの酒税は、焼酎もスピリッツも同じ蒸留酒類として、20万円に20度を超える1度ごとに1万円を加えた額です。スピリッツは37度未満でも37万円とされるため、37度以上なら、本来の税率は同じです。1962年当時は、焼酎とほかの蒸留酒の税率に大きな差がありました。
2023年4月からは、スピリッツの色の上限が、表示のルールを条件に段階的に緩和されています。ほかの酒類と誤認させない表示や、品目名を大きく書くことなどが条件で、JDSのスピリッツのラベルに品目名が大きく書かれているのは、このためです。焼酎の0.080は、据え置かれています。
色の枠。着色度は、430nmと480nmの光の吸光度で測り、どちらも0.080以下である必要があります(国税庁の通達)。樽で貯蔵した原酒を一部でも混ぜれば対象です。超えた原酒は、焼酎ではなく、スピリッツやリキュールとして出荷します。
度数の枠。酒税法は、単式蒸留焼酎を「アルコール分が四十五度以下のもの」と定めています。一度の蒸留で得られる原酒は37〜45度前後のため、ふつうに造る限り、この枠を超えることはほとんどありません。
免許の枠。単式蒸留焼酎の新しい製造免許は、需給調整のため、原則として出ません。例外として、地域の特産品を主な原料にする「特産品焼酎」の免許などがあり、奥会津蒸留所はこの制度で生まれた蔵です。スピリッツの製造免許は、需給調整の対象ではありません。
出典:酒税法(第3条第10号・第23条)、酒税法基本通達、国税庁
BOTTLERS / なぜ、JDSなのか
蒸留酒の世界では、蒸留所の外の会社が原酒や樽を買い取り、自社のラベルで瓶詰めするボトルを「ボトラーズ」と呼びます。JDSは、焼酎のボトラーズブランドです。ただ、樽を選ぶだけではありません。蔵元とともに原酒を一から仕込み、ブレンドで、これまでの焼酎の枠を超える酒をつくっています。
選ぶ
蔵元の
仕込む
蔵元とともに、原酒を
組み合わせる
蒸留方法も

焼酎、それは
安酒の象徴でもある。 しかし、逆に言えば、 それゆえに 計り知れない伸びしろを 秘めていて、 未開拓の余地が 存分にあるのである。
世界基準
グローバル基準の
淡い色
0.080以下の
note『なぜ「Japanese Dark Spirits」
ダークとホワイト
ダークと名乗ることが、
どう拓くか
三つの枠に、それぞれ別の方法で向き合っています。色の枠の内側では、ブレンドと製法で。色と度数の枠の外側では、原酒をスピリッツとして。内側と外側に、上下はありません。そして免許の枠には、いつか自分たちの蒸留所で。
INSIDE / 枠の内側で、本格焼酎として
ブレンド
色の枠の
減圧蒸留で再蒸留
樽熟成原酒を
OUTSIDE / 枠の外側で、スピリッツとして
63%で樽詰め
天盃とともに、2回蒸溜の
シングルカスク・スモールバッチ
焼酎の
OUTSIDE|スピリッツ・限定
PARTNERS / 蔵元とともに
JDSが最初に組んだ蔵元は、代表の橋本が学生時代にインターンとして働いた焼酎専門商社が、その焼酎を扱っていた蔵元です。ゑびす酒造の田中社長とは催事の売り場に一緒に立ち、六調子酒造の焼酎はシンガポールの百貨店で売りました。天盃とも、会社を立ち上げる前から親交がありました。
その焼酎が人の心を動かす場面を、売り場で見てきた。だから、焼酎の新しいかたちを試す相手として、いまも同じ蔵元と組んでいます。JDSは蒸留所を持ちません。蒸留と熟成を担うのは蔵元で、どの商品も、製造者は蔵元です。
EBISU SHUZO
明治18年(1885年)、筑後川と山々に囲まれた朝倉の地で創業。1960年から樽での貯蔵に取り組み、最低3年以上寝かせた焼酎だけを出荷してきた、長期熟成の蔵です。
TENPAI
明治31年(1898年)創業の麦焼酎の蔵。福岡・佐賀県産の二条大麦にこだわり、半世紀以上前から、常圧で2回蒸溜する独自の造りを続けています。
ROKUCHOSHI SHUZO
大正12年(1923年)、熊本・人吉球磨で創業。球磨焼酎の伝統を受け継ぎ、常圧蒸留した焼酎をじっくり寝かせる、長期熟成に特化した蔵です。原酒の熟成は平均12年に及びます。
OKUAIZU DISTILLERY
2016年、只見町の酒米農家4人と醸造家1人で設立。2017年に特産品焼酎の製造免許を受け、只見で米を育て、醸し、蒸留するまでを一貫して手がけています。
橋本 啓亮KEISUKE HASHIMOTO
株式会社SHOCHU X 代表/JDS ブレンダー
1998年生まれ。日本大学法学部卒。大学時代のアルバイト先で焼酎に出会い、在学中に焼酎専門商社でのインターンを経て、2020年4月に株式会社SHOCHU Xを設立。JDSのブレンドを担う。
NEXT / これから
色と度数の枠には、その内側と外側のボトルで向き合ってきました。これが、三つ目の枠、免許への答えです。
株式会社SHOCHU X 代表 橋本啓亮